type_Document_Title_here Go to CISG Table of Contents || Go to Database Directory

Translated text of the CISG in Japanese


Text accessed from Legal Expert Systems homepage, Director: Hajime Yoshino (Meijigakuin University)

For computers set to access "Western (Latin I)" texts, adjustments are required to access Japanese texts. For instructions, click here.



[Top of Page] [第I部] [第II部] [第III部] [第IV部]

 この条約の当事国は、国連総会の第6特別会期において採択された新国際経済秩序 の樹立に関する決議の広範な目的を銘記し、 平等と相互の利益を基礎にした国際貿易の発展は、国家間の友好関係を促進する 重要な要素であることを考慮し、 国際物品売買契約を規律し、異なった社会、経済及び法律制度を斟酌した統一準則 を採択することは、国際貿易における法的障害を除去するのに貢献し、かつ、 国際貿易の発展を促進するであろうとの見解の下に、次の通り合意した。


[Top of Page] [序文] [第II部] [第III部] [第IV部]

第I部 適用範囲および総則

第I章 適用範囲

第1条 【条約の一般的適用基準】

(1) この条約は、営業所が異なる国にある当事者間の物品売買契約につき、次の場合に適用する。
(a) これらの国が、いずれも締約国である場合、又は、
(b) 国際私法の準則が、ある締約国の法の適用を導く場合。
(2) 当事者がそれぞれ異なる国に営業所を持つ事実は、その事実が、契約からも、契約締結時以前の当事者間でのいかなる取引又は当事者によって開示されていた情報からも判明しない場合には、無視するものとする。
(3) 当事者の国籍及び当事者又は契約の民事的若しくは商事的性格は、この条約の適用性を決定するにあたって考慮しないものとする。


第2条 【適用除外となる売買】

 この条約は次の売買には適用しない。
(a) 個人、家族又は家庭で使用するために購入された物品の売買。ただし、売主が契約締結時以前において、その物品がかような使用目的で購入されたことを知らず、かつ、知るべきでもなかった場合を除く。
(b) 競売。
(c) 強制執行その他法令に基づく売買。
(d) 株式、持分、投資証券、流通証券及び通貨の売買。
(e) 船舶、艦船、ホーヴァークラフト及び航空機の売買。
(f) 電力の売買。

第3条 【「売買」の間接的定義】

(1) 物品を製造又は生産して供給する契約は、売買として扱う。ただし、その物品を注文した当事者が、その製造や生産に必要な材料の重要な部分の供給を引受けている場合はこの限りでない。 (2) この条約は、物品を提供する当事者の義務の支配的部分が、労働その他役務の提供よりなる契約には適用しない。

第4条 【適用対象となる実体法的範囲】

 この条約は、売買契約の成立並びに売買契約から生ずる売主及び買主の権利及び義務のみを規律する。この条約中に別段の明示の規定がある場合を除き、この条約は、殊に次の事項には関与しない。
(a) 契約若しくはその条項又は慣習の有効性。
(b) 売買の対象となった物品上の権原について契約が及ぼす効果。

第5条 【人的損害についての適用除外】

 この条約は、それがいかなる者に対してであれ、物品が原因となって生じた人の死亡又は身体の傷害についての売主の責任には適用しない。


第6条 【任意規定性】

 当事者は、この条約の適用を排斥することができ、また第12条に服することを条件として、この条約のいずれの規定についてもその効果を排除し又は変更できる。


第II章 総則


第7条 【条約の解釈原則、規定欠缺の場合の処理】

(1) この条約の解釈にあたっては、その国際的性格並びにその適用における統一及び国際貿易における信義の遵守を促進する必要性が顧慮されるべきものとする。
(2) この条約により規律される事項で、条約中に解決方法が明示されていない問題については、この条約の基礎にある一般原則に従い、またかかる原則がない場合には、国際私法の準則により適用される法に従って解決されるべきものとする。


第8条 【当事者の陳述その他の行為の解釈と意図、客観的意思の尊重】

(1) この条約の適用上、当事者の陳述その他の行為は、相手方がその意図を知り又は知らないはずはあり得なかった場合には、その意図に従って解釈されるべきものとする。
(2) 前項が適用され得ない場合には、当事者の陳述その他の行為は、相手方と同じ部類に属する合理的な者が同じ状況の下でしたであろう理解に従って解釈されるべきものとする。
(3) 当事者の意図又は合理的な者がしたであろう理解を決定するにあたっては、交渉経過、当事者が当事者間で確立させている慣行、慣習及び当事者の事後の行為を含め、関連する一切の状況に適切に考慮されるべきものとする。


第9条 【慣習及び慣行の尊重】

(1) 当事者は、合意している慣習及び当事者間で確立させている慣行に拘束される。
(2) 別段の合意がない限り、当事者は、暗黙のうちに、両当事者が知り又は当然知るべきであった慣習で、国際貿易において関連する特定の取引分野で同じ種類の契約をする者に広く知られ、かつ、通常一般に遵守されているものを、当事者間の契約又はその成立に適用することにしたものとして扱う。


第10条 【「営業所」の定義】

 この条約の適用上、
(a) 当事者が複数の営業所を持つ場合には、営業所とは、契約及びその履行に最も密接な関係を有する営業所を指すものとし、この判断に当たっては、契約締結時以前において両当事者に知られ又は予期されていた事情が考慮されなければならない。
(b) 当事者が営業所を持たない場合には、その常居所を営業所とみなす。

第11条 【契約方式自由の原則】

 売買契約は、書面によって締結又は立証されることを要せず、また方式についてその他のいかなる要件にも服さない。売買契約は、証人を含めいかなる方式によっても証明することができる。


第12条 【書面性の例外的要求】

 売買契約、合意によるその変更若しくは解消又は申込、承諾若しくはその他の意思の表示が書面以外の方法で行われ得ることを認める第11条、第29条又はこの条約第II部のいかなる規定も、いずれかの当事者がこの条約第96条の規定に基づく宣言を行った締約国に営業所を持つ場合には適用されない。当事者は、本条の効果を排除し又は変更できない。


第13条 【書面の意味】

この条約の適用上、「書面」には電報及びテレックスが含まれるものとする。



[Top of Page] [序文] [第I部] [第III部] [第IV部]

第II部 契約の成立



第14条 【申込の間接的定義】

(1) 一又は複数の特定の者に向けられた契約締結の申入れは、それが十分明確であり、かつ、承諾があった場合には拘束されるとの申込者の意思が示されているときは、申込となる。申入れは、物品を示し、かつ、明示又は黙示に数量及び代金を定め又はその決定方法を規定している場合には、十分明確なものとする。
(2) 不特定の者に向けられた申入れは、申込の単なる誘因として扱う。ただし、申入れをした者が異なった意向を明瞭に示している場合はこの限りでない。


第15条 【申込の効力発生時期】

(1) 申込は、被申込者に到達した時にその効力を生ずる。
(2) 申込は、たとえ取消不能のものであっても、申込の撤回通知が申込の到達前又はそれと同時に被申込者に到達する場合には、撤回し得る。


第16条 【申込の取消可能性とその制限】

(1) 契約が締結されるまで、申込は取消すことができる。ただし、この場合には、被申込者が承諾の通知を発する前に取消の通知が被申込者に到達しなければならない。
(2) しかしながら、申込は、次のいずれかの場合には、取消すことができない。
(a) 申込が、承諾期間の設定その他の方法により、取消不能のものであることを示している場合。
(b) 被申込者が、申込を取消不能のものであると了解したのが合理的であり、かつ、被申込者がその申込に信頼を置いて行動している場合。

第17条 【拒絶による申込の失効】

 申込は、たとえそれが取消不能であっても、その拒絶通知が申込者に到達した時は、その効力を失う。
 

第18条 【承諾、その効力発生時期、申込の承諾期間】

(1) 申込に同意する旨を示す被申込者の陳述その他の行為は、承諾とする。沈黙又は反応のないことは、それだけでは承諾とみなされることはない。
(2) 申込に対する承諾は、同意の意思表示が申込者に到達した時にその効力を生ずる。同意の意思表示が、申込者の定めた期間内に申込者に到達しないとき、また期間の定めがない場合においては、申込者が用いた通信手段の迅速性を含め取引の状況を十分に勘案した合理的な期間内に到達しないとき、承諾は効力を生じない。口頭による申込は、特段の事情がある場合を除き直ちに承諾されなければならない。
(3) しかしながら、申込の内容よりみて、又は当事者間で確立された慣行若しくは慣習の結果として、被申込者が申込者への通知をすることなく、物品の発送に関する行為や代金の支払等の行為を行うことにより同意を示すことができる場合には、その行為が行われた時に承諾としての効力が生ずる。ただし、その行為が前項に規定した期間内に行われた場合に限る。


  
第19条 【申込の条件付承諾】

(1) 承諾の形をとっているが、付加、制限その他の変更を含んでいる申込に対する回答は、申込の拒絶であり、反対申込となる。
(2) しかしながら、承諾の形をとった申込に対する回答が、付加的条件や異なった条件を含んでいても、申込の内容を実質的に変更するものでない場合には、申込者が不当に遅滞することなくその相違に口頭で異議を述べ又はその旨の通知を発しない限り承諾となる。申込者が異議を述べない場合には、契約の内容は申込の内容に承諾中に含まれた修正を加えたものとする。
(3) 付加的条件又は異なった条件であって、特に代金、支払、物品の品質及び数量、引渡の場所及び時期、一方当事者の相手方に対する責任の限度、又は、紛争の解決方法に関するものは、申込の内容を実質的に変更するものとして扱う。


第20条 【申込の承諾期間の計算方法】

(1) 申込者が電報又は書簡中で定めた承諾期間は、電報の発信を依頼した時点又は書簡に示された日付、またかかる日付が示されていない場合においては封筒に示された日付から起算する。申込者が電話、テレックスその他の瞬時的通信手段によって承諾期間を定めたときは、その期間は、申込が被申込者に到達した時点から起算する。
(2) 承諾期間中の公の休日又は非取引日も期間の計算に算入する。ただし、期間の末日が、申込者の営業所所在地の公の休日又は非取引日にあたるため、承諾の通知が期間の末日に申込者に配達され得ない場合には、期間はこれに次ぐ第一の取引日まで延長される。
  

  
第21条 【遅延した承諾】

(1) 遅延した承諾といえども、申込者が有効な承諾として扱う旨を遅滞なく被申込者に口頭で通告し又はその旨の通知を発した場合には、承諾としての効力を有する。
(2) 遅延した承諾を含む書簡その他の書面が、通常の通信状態であれば適切な時期に申込者に到達したであろう状況の下で発送されたことを示しているときは、申込者が遅滞なく被申込者に対して申込が既に失効していたものとして扱う旨を口頭で通告するか、又はその旨の通知を発しない限り、遅延した承諾であっても承諾としての効力を有する。


第22条 【承諾の撤回】

 承諾は、その撤回通知が、承諾の効力が生じたであろう時よりも前又はそれと同時に、申込者に到達すれば、撤回できる。


第23条 【契約の成立時期】

 契約は、申込に対する承諾がこの条約の規定に従って効力を生じた時に成立する。


第24条 【意思表示等の「到達」の定義】

 この条約第II部の適用上、申込、承諾の宣言、その他の意思の表示が相手方に「到達」した時とは、相手方にそれが口頭で伝えられた時、又はその他の方法で相手方に個人的に若しくは相手方の営業所又は郵便送付先に、また相手方が営業所も郵便送付先をも有しない場合においては相手方の常居所に配達された時とする。



[Top of Page] [序文] [第I部] [第II部] [第IV部]

第III部 物品売買

第I章 総則


第25条 【「重大な契約違反」の定義】

 当事者の一方による契約違反は、その契約の下で相手方が期待するのが当然であったものを実質的に奪うような不都合な結果をもたらす場合には、重大なものとする。ただし、違反をした当事者がかような結果を予見せず、かつ、同じ状況の下でその者と同じ部類に属する合理的な者もかかる結果を予見しなかったであろう場合を除く。


  
第26条 【解除の際の通知の要求】

 契約解除の宣言は、相手方に対する通知によってなされた場合にのみ効力を有する。


第27条 【通信伝達上のリスクの配分】

 この部に別段の明示の定めがない限り、当事者が、通知、要求その他の通信を、この部の規定に従い、かつ、状況に応じた適切な方法で行ったときは、通信の伝達過程において遅滞や誤りが生じたり、またそれが到達しなくとも、その当事者はその通信をしたことに依存する権利を失わない。
  

第28条 【特定履行と法廷地法】

 当事者が、この条約の規定に従って相手方の義務の履行を要求することができる場合であっても、裁判所は、この条約の適用のない類似の売買契約ならばそれ自体の法の下で同様の判決をするであろう場合でなければ、特定履行を命ずる判決を与える必要はない。


第29条 【合意による契約の変更及び契約の解消】

(1) 契約は当事者の合意のみで変更又は解消できる。 (2) 書面による契約が、合意による変更又は解消は書面によるべき旨を定めるときは、その他の方法で合意により変更又は解消することはできない。ただし、当事者は、自己の行動に対して相手方が信頼を置いた限度において、この定めを 援用する事ができない場合があり得る。


第II章 売主の義務


第30条 【売主の一般的義務】

 売主は、契約及びこの条約の定めるところに従い物品を引き渡し、それに関する書類を交付し、かつ、物品上の権原を移転しなければならない。
  
  
第I節 物品の引渡及び書類の交付


第31条 【引渡の場所】

 売主が物品を他の特定の場所で引き渡すことを要しない場合には、売主の引渡義務は、次の通りとする。
(a) 売買契約が物品の運送を予定する場合には、買主に送付のため物品を第一の運送人に交付すること。
(b) 前号が該当しない場合において、契約が、特定物、又は、特定の在庫品中から抽出されるべき又は製造若しくは生産される不特定物に関するものであり、かつ、契約締結時に、両当事者が、物品が特定の場所に存在し又はそこで製造あるいは生産されることを知っていた場合には、その場所で物品を買主の処分に委ねること。
(c) その他の場合には、契約締結時において売主が営業所を持っていた場所で、物品を買主の処分に委ねること。

第32条 【運送手配に関連する義務】

(1) 売主が、契約又はこの条約の規定に従って、物品を運送人に交付した場合において、物品が荷印、運送書類その他の方法によりその契約の目的物として明確に特定されていないときは、売主は、物品を特定した託送通知を買主にしなければならない。
(2) 売主が物品の運送を手配しなければならない場合には、売主は、状況に照らして適当な運輸手段により、かつ、かような運輸にとって通常の条件で、所定の場所までの運送に必要な契約を締結しなければならない。
(3) 売主が、物品の運送につき保険を付すことを要しないときでも、買主の要求があるときは、売主は、買主が保険を付すのに必要な入手可能な情報を全て買主に提供しなければならない。
     

第33条 【引渡の時期】

 売主は、次に掲げる時期に物品を引き渡さなければならない。
(a) 期日が契約によって定められ又は確定し得る場合には、その期日。
(b) 期間が契約によって定められ又は確定し得る場合には、買主が特定の日を選択すべき事情がない限り、その期間内のいずれかの日。
(c) その他の場合には、契約締結後の合理的期間内。

第34条 【書類の交付】

 売主が、物品に関する書類を交付しなければならない場合には、契約で定められた時期、場所及び方式に従って、その交付をしなければならない。交付すべき時期より前に売主が書類を交付したときは、売主は、その時期まで、買主に不合理な不便又は不合理な出捐をもたらさない限り、書類の適合性の欠缺を治癒することができる。ただし、買主は、この条約に定められたところに従い損害賠償を請求する権利を失うことはない。


第II節 物品の契約適合性及び第三者からの請求


第35条 【物品の契約適合性】

(1) 売主は、契約で定めた数量、品質及び記述に適合し、かつ、契約で定める方法に従って容器に収められ又は包装された物品を引き渡さなければならない。
(2) 当事者が別段の合意をしている場合を除き、物品は、次の要件を充たさない限り、契約に適合していないものとする。
(a) 記述されたのと同じ種類の物品が通常使用される目的に適していること。
(b) 契約締結時において売主に対し明示又は暗黙のうちに知らされていた特定の目的に適していること。ただし、状況からみて、買主が売主の技量及び判断に依存しなかった場合又は依存することが不合理であった場合を除く。
(c) 売主が買主に見本又はひな型として示した物品の品質を有すること。
(d) その種類の物品にとって通常の方法により、またかような方法がないときは、その物品を保存し保護するのに適切な方法により、容器に収められ又は包装されていること。
(3) 契約締結時において、買主が物品のある不適合を知り又は知らないはずはあり得なかった場合には、売主は、その不適合について前項(a)号から(d)号の下での責任を負わない。


第36条 【適合性要求の時点と危険負担】

(1) 売主は、危険が買主に移転した時に存在した不適合につき、契約及びこの条約の定めるところにより責任を負う。たとえその不適合がその後になってはじめて判明した場合でも同様である。
(2) 売主は、前項に規定した時より後に発生した不適合であっても、それが売主による何らかの義務の違反に起因する場合には、その不適合につき責任を負う。この義務の違反には、一定の期間物品が通常の目的若しくはある特定の目的に適するという保証又は一定の品質若しくは特性を保持するという保証の違反が含まれる。


第37条 【期日前の引渡と不適合の治癒】

売主が、引き渡すべき期日前に物品を引き渡した場合には、売主は、その期日まで、買主に不合理な不便又は不合理な出捐をもたらさない限り、欠けている部分を引き渡し若しくは数量の不足を補い、又は引き渡された不適合の物品を取り換え若しくは引き渡された物品における不適合を治癒することができる。ただし、買主は、この条約に定められたところに従い損害賠償を請求する権利を失うことはない。


第38条 【買主の物品検査義務】

(1) 買主は、その状況に応じ実際上可能な限り短い期間のうちに、物品を検査し又はその検査をさせなければならない。
(2) 契約が物品の運送を予定する場合には、検査は、物品が仕向地に到達した後まで延期し得る。
(3) 買主が、検査のための合理的な機会を有しないまま運送中の物品の仕向地を変更し又は物品を転送した場合であって、売主が、契約締結時において、かかる変更又は転送の可能性を知り又は知るべきであったときは、検査は、物品が新たな仕向地に到達した後まで延期し得る。
  

  
第39条 【不適合の通知義務、瑕疵担保期間】

(1) 買主が、物品の不適合を発見し又は発見すべきであった時から合理的期間内に、売主に対し不適合の性質を明確にした通知を与えない場合には、買主は物品の不適合に基づいて援用し得る権利を失う。
(2) いかなる場合においても、物品が買主に現実に交付された日から遅くとも2年以内に、買主が売主に前項の通知を与えないときは、買主は物品の不適合に基づいて援用し得る権利を失う。ただし、この期間制限が約定の保証期間と両立しない場合はこの限りでない。


第40条 【売主が不適合を知っていた場合の例外】

 物品の不適合が、売主の知り又は知らないはずはあり得なかった事実で、かつ、売主がそのことを買主に対して明らかにしなかった事実に関連するときは、売主は、第38条及び第39条の規定を援用することができない。


第41条 【追奪担保一般】

 売主は、買主が第三者の権利又は請求の対象となっている物品を受領することに同意した場合を除き、その権利又は請求から自由な物品を引き渡さなければならない。ただし、これらの権利又は請求が工業所有権その他の知的財産権に基づくものであるときは、売主の義務は第42条によって規律される。


  
第42条 【第三者の知的財産権に係わる追奪担保の特則】

(1) 売主は、工業所有権その他の知的財産権に基づく第三者の権利又は請求であって、契約締結時において売主がそれを知り又は知らないはずはあり得なかったものから自由な物品を引き渡さなければならない。ただし、その権利又は請求が、次に掲げる国の法律の下での工業所有権その他の知的財産権に基づく場合に限る。
(a) 契約締結時において、物品がある国で転売され又はその国で使用されることが、両当事者により予期されていた場合には、物品が転売又は使用されるその国の法律。
(b) その他の場合には、買主が営業所を持つ国の法律。
(2) 前項の売主の義務は、次の場合には適用しない。
(a) 契約締結時において買主がその権利又は請求を知り又は知らないはずはあり得なかった場合、又は、
(b) その権利又は請求が、買主の提供した技術設計、デザイン、混合法その他の指定に売主が従った結果生じた場合。

第43条 【追奪担保に関する通知義務、売主が知っていた場合の例外】

(1) 買主が、第三者の権利又は請求を知り又は知るべきであった時から合理的期間内に、売主に対しその権利又は請求の性質を明確にした通知を与えない場合には、買主は第41条又は第42条の規定を援用する権利を失う。
(2) 売主は、第三者の権利又は請求及びその性質を知っていたときは、前項の規定を援用することができない。
  

  
第44条 【通知懈怠への例外的救済】

 第39条(1)項及び第43条(1)項の規定にかかわらず、買主は、定められた通知を行わなかったことにつき合理的説明を与え得るときは、第50条に基づき代金を減額し、又は、得べかりし利益の喪失を除き、損害の賠償を請求することができる。

第III節 売主による契約違反に対する救済


第45条 【救済方法一般】

(1) 売主が契約又はこの条約に定められた義務のいずれかを履行しない場合には、買主は次の救済を求めることができる。
(a) 第46条から第52条までに規定された権利を行使すること。
(b) 第74条から第77条までの規定に従い損害賠償を請求すること。
(2) 買主が損害賠償を請求する権利は、それ以外の救済を求める権利の行使によって失われることはない。
(3) 買主が契約違反に対する救済を求める場合に、裁判所又は仲裁機関は売主に猶予期間を与えてはならない。


第46条 【特定履行、代替品引渡又は修理の要求】

(1) 買主は、売主に対してその義務の履行を要求することができる。ただし、買主がこの要求と両立し得ない救済を求めている場合はこの限りではない。
(2) 物品が契約に適合していない場合には、買主は代替品の引渡を要求することができる。ただし、その不適合が重大な契約違反を構成し、かつ、その要求が、第39条の下での通知の際又はその後合理的な期間内になされたときに限る。
(3) 物品が契約に適合していない場合において、全ての状況から見て不合理でないときは、買主は売主に対してその不適合を修理によって治癒することを要求できる。修理の要求は、第39条の下での通知の際又はその後合理的な期間内になされなければならない。
  

  
第47条 【履行のための付加期間の付与】

(1) 買主は、売主による義務の履行のために、合理的な長さの付加期間を定めることができる。
(2) その期間内に履行しない旨の通知を売主から受け取った場合でない限り、買主はその期間中契約違反についてのいかなる救済をも求めることができない。ただし、これにより買主は履行の遅滞について損害賠償を請求する権利を失うことはない。


第48条 【売主による不履行の治癒】

(1) 第49条に服することを条件として、売主は、引渡期日後であっても、不合理な遅滞を招くことなく、かつ、買主に不合理な不便又は買主の前払い出費につき売主から償還を受けるについて買主に不安を生ぜしめずになし得る場合には、自己の費用によりその義務のあらゆる不履行を治癒することができる。ただし、この場合でも、買主はこの条約に定められた損害賠償を請求する権利は失わない。
(2) 売主が買主に対して履行を受け入れるか否かにつき問合わせをした場合において、買主が合理的な期間内にそれに応答しないときは、売主は、その問合わせの中で示した期間内に履行することができる。この期間中、買主は、売主による履行と両立し得ない救済を求めることができない。
(3) 一定の期間内に履行を行う旨の売主の通知は、買主にその選択を知らせるようにとの前項の下での問合わせを含むものと推定する。
(4) (2)項又は(3)項の下での売主の問合わせ又は通知は、買主が受け取らない限りその効果を生じない。
(i) 買主がその違反を知り又は知るべきであった時。
(ii) 第47条(1)項に基づき買主が定めた付加期間が経過した時、又は売主がその付加期間以内に義務の履行をしない旨を売主が宣言した時。
(iii) 第48条(2)項に基づき売主が示した付加期間が経過した時、又は買主が履行を受け入れない旨を宣言した時。

第50条 【代金の減額】

 物品が契約に適合していない場合には、代金が既に支払われていると否とにかかわらず、現実に引き渡された物品の引渡の際の価値が契約に適合する物品ならばその時に有していたであろう価値に対する割合に応じて、買主は代金を減額することができる。ただし、売主が第37条又は第48条に従ってその義務の不履行を治癒した場合や、それらの規定に従った売主による履行の受け入れを買主が拒絶した場合には、買主は代金を減額することができない。

第51条 【一部不履行の場合の処理】

(1) 売主が物品の一部のみを引き渡した場合又は引き渡された物品の一部のみが契約に適合している場合には、第46条から第50条までの規定は、不足している部分又は適合していない部分について適用する。
(2) 引渡が完全にはなされなかったことや契約に適合してなされなかったことが、その契約の重大な違反となる場合に限り、買主は契約全体の解除を宣言することができる。


第52条 【期日前の履行、数量超過の引渡】

(1) 売主が定められた期日前に物品を引き渡す場合には、買主は引渡を受領するか引渡の受領を拒絶するかの自由を有する。
(2) 売主が契約で定めるよりも多量の物品を引き渡す場合には、買主は引渡を受領するか超過分の引渡の受領を拒絶するかの自由を有する。買主が、超過分の全部又は一部の引渡を受領した場合には、契約価格の割合でその対価を支払わなければならない。


第III章 買主の義務


第53条 【買主の一般的義務】

 買主は、契約及びこの条約の定めるところに従い、物品の代金を支払い、かつ、物品の引渡を受領しなければならない。


第I節 代金の支払


第54条 【代金支払義務の内容】

 買主の代金支払義務には、契約又は関連する法令の定めるところに従って、支払を可能にするための措置をとること及びそれに必要な手続きを遵守することを含む。


第55条 【代金未定の場合の処理】

 契約が有効に締結されているが、明示又は黙示により代金を定めていないか又はその決定方法を規定していないときは、当事者は、別段の事情がない限り、契約締結時にその取引と対比し得る状況の下で売却されていた同種の物品につき一般的に請求されていた代金に暗黙の言及をしているものとして扱う。


第56条 【重量に従った代金の決定】

 代金が物品の重量に従って定められるべき場合において、その趣旨が明確でないときは、正味の重量によって決定するものとする。


第57条 【支払場所】

(1) 代金を他の特定の場所で支払うことを要しない場合には、買主はそれを次の場所で売主に支払わなければならない。
(a) 売主の営業所、又は、
(b) 物品又は書類の交付と引換えに代金を支払うべきときには、その交付が行われる場所。
(2) 契約締結後に売主が営業所を変更したことにより生じた代金支払に付随する費用の増加は、売主の負担とする。
 

  
第58条 【支払の時期】

(1) 代金を他の一定期日に支払うことを要しない場合には、契約及びこの条約の定めるところに従い売主が物品又はその処分を支配する書類を買主の処分に委ねた時に、買主は代金を支払わなければならない。売主は、その支払を、物品又は書類の交付のための条件とすることができる。
(2) 契約が物品の運送を予定する場合には、売主は、代金の支払と引換えでなければ物品又はその処分を支配する書類を買主に交付してはならないとの条項を付して、物品を発送することができる。
(3) 買主は、物品を検査する機会を有するまでは、代金を支払うことを要しない。ただし、当事者間で合意された引渡又は支払の手続が、買主が検査の機会を持つことと両立する場合はこの限りでない。


第59条 【履行期到来と売主からの催告の不要】

 買主は、契約及びこの条約により定められた日又は確定し得る日に、代金を支払わなければならず、売主側は、いかなる要求をすることも、いかなる方式を遵守することも必要でない。


第II節 引渡の受領


第60条 【引渡受領義務】

 買主の引渡受領義務の内容は、次の通りとする。
(a) 売主による引渡を可能にするため買主に合理的に期待され得る全ての行為を行うこと、及び、
(b) 物品を引き取ること。


第III節 買主による契約違反に対する救済


第61条 【救済方法一般】

(1) 買主が契約又はこの条約に定められた義務のいずれかを履行しない場合には、売主は次の救済を求めることができる。
(a) 第62条から第65条までに規定された権利を行使すること。
(b) 第74条から第77条までの規定に従い損害賠償を請求すること。
(2) 売主が損害賠償を請求する権利は、それ以外の救済を求める権利の行使によって失われることはない。
(3) 売主が契約違反に対する救済を求める場合に、裁判所又は仲裁機関は買主に猶予期間を与えてはならない。


第62条 【特定履行の要求】

 売主は、買い主に対して代金の支払、引渡の受領、その他の買主の義務の履行を要求することができる。ただし、売主がその請求と両立し得ない救済を求めている場合はこの限りではない。


第63条 【履行のための付加期間の付与】

(1) 売主は、買主による義務の履行のために、合理的な長さの付加期間を定めることができる。
(2) その期間内に履行しない旨の通知を買主から受け取った場合でない限り、売主はその期間中契約違反についてのいかなる救済をも求めることができない。ただし、これにより売主は履行の遅滞について損害賠償を請求する権利を失う事はない。


    
第64条 【売主による契約の解除】

(1) 売主は、次のいずれかの場合には、契約の解除を宣言することができる。
(a) 契約又はこの条約に基づく買主の義務のいずれかの不履行が、重大な契約違反となる場合。
(b) 第63条(1)項に基づき売主が定めた付加期間内に、買主が代金支払義務若しくは物品の引渡受領義務の履行を怠る場合、又は買主がその期間内にその義務を履行しない旨を宣言した場合。
(2) しかしながら、買主が代金を既に支払っている場合においては、次に掲げる時期に契約の解除を宣言しない限り、売主は解除を宣言する権利を失う。
(a) 買主による遅延した履行については、売主が履行のなされたことを知る前。
(b) 遅延した履行以外の買主による違反については、次に掲げるいずれかの時以後の合理的期間内。

第65条 【売主による目的物の指定】

(1) 契約上、買主が物品の形、寸法その他の特徴を指定すべき場合において、合意された期日又は売主からの要求を受領した後の合理的期間内に買主がその指定をしないときは、売主は、自己が有し得る他のいかなる権利も損なうことなしに、自己が知っている買主の必要性に従って、自らその指定をすることができる。
(2) 売主が自らその指定をする場合には、売主は買主に対してその詳細を通知するとともに買主がそれと異なる指定をなし得るための合理的期間を設定しなければならない。買主が、かかる通知を受領した後、設定された期間内に異なった指定をしない場合には、売主のした指定が拘束力を持つ。


第IV章 危険の移転


第66条 【危険移転後の物品の滅失毀損と代金支払義務】

 危険が買主に移転した後に物品が滅失又は毀損しても、買主は代金支払義務を免れない。ただし、その滅失又は毀損が売主の作為又は不作為による場合はこの限りでない。


第67条 【運送を予定する場合の危険移転時期】

(1) 売買契約が物品の運送を予定する場合において、売主が特定の場所で物品を交付することを要しないときは、売買契約に従って買主への送付のため物品が第一の運送人に交付された時に、危険は買主に移転する。売主が特定の場所で物品を運送人に交付しなければならないときは、物品がその場所で運送人に交付されるまで、危険は買主に移転しない。売主が物品の処分を支配する書類を保持する権限を与えられていても、この事実は危険の移転に影響を及ぼさない。
(2) しかしながら、買主への危険の移転は、物品が荷印、運送書類、買主に対する通知又はその他の方法により、契約の目的物として明確に特定されるまでは生じない。


  
第68条 【運送途上にある物品の売買と危険移転時期】

 運送途上にある物品が売買されたときは、契約締結時から、危険は買主に移転する。ただし、状況によっては、運送契約を表象する書類を発行した運送人に物品が交付された時からの危険を買主が引き受けている場合もあるものとする。しかしながら、売買契約締結時に、物品が既に滅失又は毀損していたことを売主が知り又は知るべきであった場合において、そのことを買主に対して明らかにしなかったときは、その滅失又は毀損は売主の負担となる。


第69条 【その他の場合の危険移転時期】

(1) 第67条及び第68条が該当しない場合には、危険は、買主が物品を引き取った時に、また買主が適時に物品を引き取らない場合には、物品が買主の処分に委ねられ、かつ、引渡を受領しないことにより買主が契約に違反した時から、買主に移転する。
(2) しかしながら、売主が営業を営む以外の場所で買主が物品を引き取らなければならない場合には、引渡の履行期が到来し、かつ、物品がその場所で買主の処分に委ねられていることを買主が知った時に、危険は移転する。
(3) 契約が、その当時特定されていなかった物品に関するものであるときは、契約の目的物として明確に特定されるまで、物品は買主の処分に委ねられていないものとして扱う。


第70条 【売主による重大な契約違反と危険負担との関係】

 売主が重大な契約違反を行なった場合には、第67条、第68条及び第69条の規定は、買主がその違反を理由として求め得る救済を損なうものでない。


第V章 売主及び買主の義務に共通する規定

第I節 履行期前の契約違反及び分割履行の契約


第71条 【履行の停止】

(1) 契約締結後に、次に掲げるいずれかの事由により、相手方がその義務の重要な部分を履行しないであろうことが判明した場合には、当事者は自己の義務の履行を停止することができる。
(a) 相手方の履行能力又はその信用状態の著しい劣悪。
(b) 契約履行の準備又はその実行における相手方の行動。
(2) 前項に規定した事由が明らかになる前に、売主が、物品を既に発送している場合には、たとえ物品を取得し得る証券が買主の手許にあるときでも、売主は物品が買主に交付されるのを妨げることができる。本項は、売主と買主相互間での物品をめぐる権利のみに関係する。
(3) 物品の発送後か否かにかかわらず、履行を停止した当事者は、相手方に対して履行を停止した旨を直ちに通知し、かつ、相手方がその履行につき適切な保証を提供したときは、履行を継続しなければならない。


第72条 【履行期前の契約解除】

(1) 相手方が重大な契約違反を侵すであろうことが契約の履行期日前において明瞭である場合には、当事者は契約の解除を宣言することができる。
(2) 時間が許す場合には、契約の解除を宣言しようとする当事者は、相手方がその履行につき適切な保証を提供し得る機会を与えるため、合理的な通知を与えなければならない。
(3) 前項の要件は、相手方がその義務を履行しない旨を宣言している場合には適用しない。
    

第73条 【分割履行の契約における違反】

(1) 物品を分割して引き渡す契約において、いずれかの分割部分についての一方の当事者の何らかの義務の不履行が、その分割部分について重大な契約違反となる場合には、相手方はその分割部分につき契約の解除を宣言することができる
。 (2) いずれかの分割部分についての一方の当事者の何らかの義務の不履行が、将来の分割部分につき重大な契約違反の発生を推断させるのに十分な根拠を相手方に与える場合には、相手方は将来に向かって契約の解除を宣言することができる。
ただし、この宣言は、合理的な期間内になされる場合に限る。
(3) 買主がある引渡について契約の解除を宣言する場合において、既になされた引渡又は将来の引渡がその引渡と相互に依存関係にあるために、契約締結時において両当事者により予期されていた目的のためにそれらを用いることができなくなったときは、買主は同時にそれらの引渡についても契約の解除を宣言をすることができる。


第II節 損害賠償


第74条 【損害賠償の範囲についての一般原則】

 一方の当事者の契約違反に対する損害賠償は、得べかりし利益の喪失も含め、その違反の結果相手方が被った損失に等しい額とする。この損害賠償は、違反をした当事者が契約締結時に知り又は知るべきであった事実及び事項に照らし、契約違反から生じ得る結果として契約締結時に予見し又は予見すべきであった損失を超え得ないものとする。


第75条 【契約解除後に代替取引がなされた場合】

 契約が解除された場合において、合理的な方法で、かつ、解除後合理的な期間内に、買主が代替品を購入し又は売主が物品を他に売却したときは、損害賠償を請求する当事者は、契約代金と代替取引における代金との差額及びさらにそれ以上の損害があるときは第74条に基づく損害賠償を請求することができる。


  
第76条 【契約解除後に代替取引がなされなかった場合】

(1) 契約が解除された場合において物品に時価があるときで、損害賠償を請求する当事者が第75条の下での購入又は他への売却を行っていないときは、その当事者は契約で定められた代金と解除時における時価との差額及びさらにそれ以上の損害があるときは第74条に基づく損害賠償を請求することができる。ただし、損害賠償を請求する当事者が物品を引き取った後に契約を解除したときは、解除時における時価に代えて物品を引き取った時における時価を適用するものとする。
(2) 前項の適用上、時価とは、物品の引渡がなされるべきであった場所における支配的な価格とする。ただし、その場所に時価がない場合には、合理的に代置して参考とし得る他の場所における価格を時価とし、その際は物品の運送費用の差を適切に加味するものとする。


第77条 【契約違反の相手方に課せられる損害軽減業務】

 契約違反を主張しようとする当事者は、得べかりし利益の喪失も含め、違反から生ずる損失を軽減するためその状況下で合理的な措置をとらなければならない。当事者がかかる措置をとることを怠った場合には、違反をしている相手方は、損害賠償から、軽減されるべきであった損失額の減額を請求できるものとする。


第III節 利息


第78条 【利息の支払を受ける権利】

 当事者が延滞している代金その他の金銭の支払を怠る場合には、相手方は、その金銭への利息の支払を受ける権利がある。ただし、このことは第74条に基づく損害賠償の請求を妨げるものではない。


第IV節 免責


    
第79条 【自己の支配を越えた障害発生による不履行】

(1) 当事者が自己の負担するいずれかの義務の不履行につき、それが自己の支配を越えた障害によるものであり、かつ、その障害を契約締結時に考慮に入れておくことも、その障害又はその結果を回避又は克服することも合理的にみて期待され得なかったことを証明したときは、その不履行についての責任を負わない。
(2) 当事者の不履行が、契約の総体又はその一部を履行するために使った第三者の不履行によるときは、当事者は次の場合にのみ免責される。
(a) 当事者が前項の規定に基づけば免責され、かつ、
(b) 当事者が使った第三者も、その者に前項の規定が適用されれば免責されるであろう場合。
(3) 本条に規定する免責は、障害が存在する期間効力を有する。
(4) 不履行に陥った当事者は、相手方に対して、障害及び、その自己の履行能力への影響につき、通知を与えなければならない。不履行に陥った当事者が障害を知り又は知るべきであった時から合理的期間内に、その通知が相手方により受け取られない場合には、当事者は、通知不受領の結果として生ずる損害について賠償責任を負う。
(5) 本条は、いずれの当事者についても、この条約に基づく損害賠償請求以外の権利を行使することを妨げるものではない。


第80条 【自己の作為、不作為に起因する相手方の不履行】

 当事者は、相手方の不履行が自己の作為又は不作為の結果として生じた場合には、相手方の不履行をその限りにおいて主張することができない。


第V節 解除の効果


第81条 【契約上の義務からの解放とその限度、原状回復義務】

(1) 契約の解除は、損害賠償義務を除き、両当事者を契約上の義務から解放する。解除は、契約中の紛争解決のための条項や、契約の解除があった場合の当事者の権利義務を規定するその他の契約条項には影響を及ぼさない。
(2) 契約の総体又はその一部を既に履行している当事者は、相手方に対して、自己がその契約の下で既に供給し又は支払ったものの返還を請求することができる。当事者双方が、返還しなければならない場合には、それらの履行は同時に行われなければならない。


    
第82条 【原状回復不能のため解除や代替品引渡要求が許されない場合】

(1) 買主が物品を受け取った当時と実質的に同等の状態でその物品を返還できない場合には、買主は、契約の解除を宣告する権利や、売主に代替品の引渡を要求する権利を失う。
(2) 前項は、次の場合には適用しない。
(a) 物品を返還できないことや物品を受け取った当時と実質的に同等の状態でそれを返還できないことが、買主の作為又は不作為によるものでない場合。
(b) 物品又はその一部が、第38条に規定する検査の結果として毀滅又は劣化した場合。
(c) 買主が不適合を発見し又は発見すべきであった時より前に、物品又はその一部が通常の営業過程で買主により売却され又は通常の用法で消費若しくは改変された場合。


    
第83条 【解除や代替品引渡要求が許されない場合と他の救済方法】

 前条に従い契約の解除を宣言する権利や売主に代替品の引渡を要求する権利を失った買主といえども、契約及びこの条約に基づいた全ての他の救済を求める権利は保持する。


第84条 【利息の支払、得た利益の返還】

(1) 売主が代金の払戻しをなすべき場合には、代金の支払がなされた日からの利息も支払わなければならない。
(2) 買主は、次の場合には、物品又はその一部から得た全ての利益を、売主のものとして計算しなければならない。
(a) 買主が、物品又はその一部を返還しなければならない場合。
(b) 物品の全部又は一部を返還すること又は物品を受け取った当時と実質的に同等の状態で物品の全部又は一部を返還することができないにもかかわらず、買主が、契約を解除し又は売主に代替品の引渡を要求した場合。


第VI節 物品の保存


第85条 【受領遅滞と売主が物品の保存措置をとる義務】

 買主が物品の引渡の受領を遅滞した場合、又は、代金の支払と物品の引渡が同時に履行されるべきときで、買主が代金の支払いを怠った場合において、売主が物品を占有し又は、その他の方法によりその処分を支配できるときは、売主はその物品につきその状況下で合理的な保存措置をとらなければならない。売主は、買主からその合理的費用の償還を受けるまでその物品を留置することができる。


  
第86条 【買主が物品を拒絶後にその保存措置をとる義務】

(1) 買主が物品を受け取っている場合において、その物品を拒絶するため契約又はこの条約に基づく権利を行使しようとするときは、買主はその物品につきその状況下で合理的な保存措置をとらなければならない。買主は、売主からその合理的費用の償還を受けるまでその物品を留置することができる。
(2) 買主に宛てて送付された物品が仕向地で買主の処分に委ねられた場合において、買主がその物品を拒絶する権利を行使するときは、買主は売主のためにその物品の占有を取得しなければならない。ただし、代金の支払をすることなく、かつ、不合理な不便又は不合理を出捐を伴うことなく占有を取得できる場合に限る。この規定は、売主又は売主のために物品の管理権限を有する者が仕向地にいる場合には適用しない。買主が本項に従い物品の占有を取得する場合には、買主の権利及び義務については前項を適用する。


第87条 【保存措置としての倉庫への寄託】

 物品の保存措置をとらなければならない当事者は、その費用が不合理なものでない限り、相手方の費用で物品を第三者の倉庫に寄託することができる。


第88条 【保存物品の売却】

(1) 第85条又は第86条に基づき物品を保存しなければならない当事者は、相手方による物品の占有の取得若しくはその取り戻し又は代金若しくは保存費用の支払につき不合理な遅滞があるときは、何らかの適当な方法で物品を売却することができる。ただし、相手方に対して、売却の意図につき、合理的な通知が与えられたことを条件とする。
(2) 物品が、急速に劣化しやすき場合、又はその保存に不合理な出捐を要する場合には、第85条又は第86条に基づき物品を保存しなければならない当事者は、物品を売却するため合理的な措置をとらなければならない。この場合には、可能な限り、相手方に対して売却の意図につき通知が与えられるべきものとする。
(3) 物品を売却した当事者は、売却代金から物品の保存及びその売却に要した合理的な費用に等しい額を留めおく権利を有する。その残額は、相手方のものとして計算しなければならない。



[Top of Page] [序文] [第I部] [第II部] [第III部]

第IV部 最終条項


第89条 【条約の寄託者】

 この条約の寄託者として、国際連合事務総長を指定する。
 
第90条 【他の条約等の国際的な合意との関係】

 この条約は、既に発効し又は今後発効する国際的な合意であって、この条約により規律される事項に関する規定を含むものには優先しない。ただし、契約の両当事者がその合意の当事国に営業所を持つ場合に限る。


第91条 【批准、受諾若しくは承認又は加入の必要性】

(1) この条約は、国際物品売買契約に関する国際連合会議の最終日に署名のため解放され、ニューヨークの国際連合本部において1981年9月30日まで全ての国による署名のため開放する。
(2) この条約は、署名国により批准、受諾又は承認されなければならない。
(3) この条約は、署名のため解放された日から、署名国でない全ての国による加入のため解放される。
(4) 批准書、受諾書、承認書又は加入書は、国際連合事務総長に寄託するものとする。


第92条 【条約第II部又は第III部に拘束されない旨の留保】

(1) 締約国は、署名、批准、受諾、承認又は加入の時に、その国がこの条約第II部に拘束されない旨、又は、その国がこの条約第III部に拘束されない旨を宣言することができる。
(2) この条約の第II部又は第II部につき前項に基づいて宣言を行う締約国は、その宣言の対象となる部が規律する事項については、この条約第1条(1)項にいう締約国とみなされない。


第93条 【連邦国家、多数法国による適用領域に関する留保】

(1) 締約国が、複数の領域を有し、かつ、その国の憲法に従って、この条約が扱っている事項に関し各領域で異なった法制が施行されている場合には、その国は、署名、批准、受諾、承認又は加入の時に、この条約をその全部の領域又は1部の領域にのみ適用する旨を宣言することができ、かつ、いつでも新たな宣言により、前の宣言を変更することができる。
(2) 前項の宣言は、寄託者に通告されるべきものとし、この条約の適用される領域が明示されるべきものとする。
(3) 本条の下での宣言の結果、この条約が締約国の1又は複数の領域に適用されるが、それが全ての領域には及んでいない場合において、当事者の営業所がその国にあるときは、その営業所がこの条約の適用される領域にない限り、この条約の適用上、その営業所は締約国にはないものとみなす。
(4) 締約国が(1)項の宣言をしない場合には、この条約はその国の全領域で適用あるものとする。


第94条 【共通法連合における適用制限に関する留保】

(1) この条約が規律する事項につき同一又は相互に密接な関係を持つ法令を有する複数の締約国は、売買契約の両当事者の営業所がそれらの国に所在する場合にはこの条約をその売買契約及びその成立については適用しない旨を、いつでも宣言することができる。この宣言は、共同で又はそれぞれ単独の相互主義的な宣言により行うことができる。
(2) この条約が規律する事項につき、一又は複数の非締約国と同一又は相互に密接な関係を持つ法令を有する締約国は、売買契約の両当事者の営業所がそれらの国に所在する場合にはこの条約をその売買契約及びその成立については適用しない旨を、いつでも宣言することができる。
(3) 前項の宣言の対象となった国がその後締約国となった場合には、その宣言は、この条約がその新たな締約国について発効する日から、(1)項の下での宣言としての効力を有する。ただし、新たな締約国がその宣言に加わるか又は単独で相互主義的な宣言を行った場合に限る。


第95条 【条約適用基準として国際私法を排斥する旨の留保】

 いずれの国も、批准書、受諾書、承認書又は加入書の寄託の時に、この条約第1条(1)項(b)号に拘束されない旨を宣言することができる。


第96条 【契約に書面性を要求する旨の留保】

 その国の立法により、売買契約の締結又は立証が書面によりなされるべきことを要求している締約国は、第12条に基づき、売買契約、合意によるその変更若しくは解消、又は申込、承諾その他の意思の表示を書面以外の方法で行うことを認める第11条、第29条又はこの条約第II部のいかなる規定も、いずれかの当事者がその国に営業所を持つ場合には適用しない旨を、いつでも宣言をすることができる。


第97条 【留保宣言の確認、留保の効力発生時期、留保の撤回】

(1) 署名の時にこの条約に基づいてなされた宣言は、批准、受諾又は承認に際してこれを確認すべきものとする。
(2) 宣言及び宣言の確認は、書面によりこれを行い、かつ、正式に寄託者に通告されなければならない。
(3) 宣言は、それを行った国との関係においてこの条約が発効するのと同時に効力を生ずるものとする。ただし、条約の発効後寄託者が正式の通告を受領した宣言は、寄託者がそれを受領した日から6箇月が経過した後の最初の月の初日に効力を生ずるものとする。第94条の下での相互主義を条件とした複数の単独宣言は、寄託者が、関連国間で対応する最後の宣言を受領した時から6箇月が経過した後の最初の月の初日に効力を生ずる。
(4) この条約の下での宣言を行った国は、寄託者に宛てた書面による正式の通告により、その宣言をいつでも撤回することができる。この撤回は、寄託者が通告を受領した日から6箇月が経過した後の最初の月の初日に効力を生ずる。
(5) 第94条の下での宣言が撤回されたときは、その撤回が効力を生ずる日から、同条の下でなされた他の国による相互主義的宣言の効果を停止させる。


第98条 【他の一切の留保の禁止】

この条約中で明確に認められたもの以外の留保は一切認めない。


第99条 【条約の発効時期、1964年ハーグ条約の当事国との関係】

(1) この条約は、(6)項の規定に服することを条件として、第92条に基づく宣言が含まれているものも含め第10番目の批准書、受諾書、承認書又は加入書が寄託された日から12箇月が経過した後の最初の月の初日に発効する。
(2) この条約の第10番目の批准書、受諾書、承認書又は加入書の寄託の後に、批准、受諾、承認又は加入する国については、この条約は、適用を排除される部を除き、(6)項の規定に従うことを条件をして、その国の批准書、受諾書、承認書又は加入書が寄託された日から12箇月が経過した後の最初の月の初日に発効する。
(3) 1964年7月1日ハーグにおいて作成された国際物品売買契約の成立についての統一法に関する条約(1964年ハーグ成立条約)及び1964年7月1日ハーグにおいて作成された国際物品売買についての統一法に関する条約(1964年ハーグ売買条約)の一方又はその双方の当事国が、この条約を批准、受諾、承認又は加入するときは、オランダ政府に通告することにより、その場合に応じ、1964年ハーグ成立条約及び1964年ハーグ売買条約の一方又はその双方を、同時に廃棄しなければならない。
(4) 1964年ハーグ売買条約の当事国でこの条約を批准、受諾、承認又は加入する国が、第92条に基づきこの条約の第II部に拘束されない旨の宣言を行い又は行っている場合には、その国は、批准、受諾、承認又は加入の時に、オランダ政府に通告することにより、1964年ハーグ売買条約を廃棄しなければならない。
(5) 1964年ハーグ成立条約の当事国でこの条約を批准、受諾、承認又は加入する国が、第92条に基づきこの条約の第III部に拘束されない旨の宣言を行い又は行っている場合には、その国は、批准、受諾、承認又は加入の時に、オランダ政府に通告することにより、1964年ハーグ成立条約を廃棄しなければならない。
(6) 本条の適用上、1964年ハーグ成立条約又は1964年ハーグ売買条約の当時国によるこの条約の批准、受諾、承認又は加入は、その国がそれらの条約についてしなければならない廃棄の通告が効力を生ずるまでは効力を生じない。この条約の寄託者は、この点についての必要な相互調整を確実にするため、1964年条約の寄託者であるオランダ政府と協議しなければならない。


第100条 【遡及的適用の禁止】

(1) この条約が契約の成立に適用されるのは、第1条(1)項(a)号に規定する締約国の双方につき又は同項(b)号に規定する締約国につきこの条約が効力を生じた日以後に契約締結のための申入れがなされた場合のみである。
(2) この条約が適用されるのは、第1条(1)項(a)号に規定する締約国の双方につき又は同項(b)号に規定する締約国につきこの条約が効力を生じた日以後に締結された契約のみである。


第101条 【条約又は第II部若しくは第III部の廃棄】

(1) 締約国は、寄託者に宛てた書面による正式な通告により、この条約又はこの条約の第II部若しくは第III部を廃棄することができる。
(2) 廃棄は、寄託者がその通告を受領してから12箇月が経過した後の最初の月の初日に効力を生ずる。通告中で廃棄の効力発生につきより長い期間が指定されている場合には、廃棄は、寄託者が通告を受領してからその期間が経過することにより効力を生ずる。


Pace Law School Institute of International Commercial Law - Last updated August 31, 1998
Go to CISG Table of Contents || Go to Database Directory